こんばんは。ツバメスタジオ君島です。
2022年9月10日午後4時すぎより、ツバメスタジオが入居する東京 浅草橋の増井ビルの取り壊し決定を悼み、「増井ビル解体祭」と称し集団による即興演奏を中心にした会を催しました。
この音源は、ほぼ開始から終息まで、2時間13分に及ぶ演奏の記録です。(ファイルサイズの都合でほぼ1時間ずつでふたつに分かれています)
各階に無指向性のバウンダリーマイクを1基ずつ設置したものをミックスしました。左から聞こえてくるのが4階、中央が5階、右が6階です。
映像はこちらでご覧になれます。
youtu.be/pfbmWMbKuBg
エンドロール以外はカメラマイクですので、この音源とは別の遠近感とフォーカスの音を聞くことができます。
~~~
記憶を遡ると、、、
ツバメスタジオは、近しい仲間3人に声をかけ、2009年2月、1968年築のこの7階建ての雑居ビルの最上階に入居したことから始まりました。
事務所兼倉庫として使われていた部屋の造作をすべて撤去し、水回りの配管を移動させ、壁を作り、ドアを作り、棚や家具を作りました。小さな録音ブースは床と天井も作りました。
スタジオを作るに当たっては、Jeff Cooper著「Building a Recording Studio」を取り寄せ、もっぱら参考としました。アメリカとは内装工事や建材の規格が違いますが、材料による壁の遮音性能の違いが具体的なイラストと性能値で記されているなどとても分かりやすく、移転先の工事でも何度も参照しました。
増井ビルでの最初の数年は、造作工事中の部分をブルーシートで隠しながら録音ミックスを行っていたものでした。
晩年のかたちに落ち着くまでに6年ほどかかったかもしれません。
スタジオのドアを開けると真正面にあった、文字盤がレジン製のツバメの塑像になっている時計は2015年の春に台湾で買ってきたものを取り付けました。台湾のhaoshi designという会社がいまも作っています。
その後も内窓が小さいのが気に入らず壁を丸鋸でくりぬいて窓を大きくするなどしました。
後年は、時間貸しでスターティングメンバーの一人が時折使用する以外は、もっぱら私ひとりでここで時間を過ごしました。
さまざまな音楽家やさまざまなそうでない人たちを日々お迎えするのはとても楽しいことでした。広く見晴らしの良いベランダは好評でした。
解体祭の日は、テナントが退去したビルの4階、5階、6階の廊下と階段踊り場など、各自思い思いの場所に座を占めて演奏してもらいました。7階では演者向けにウミネコカレーがケータリングをふるまってくれました。
演者の皆さんには、他の階から漏れ聞こえてくる音に耳を澄ませて演奏してください、とだけお願いしました。じつはもうひとつ、大団円を演出するような、蛇足と言わざるをえない演奏指示も伝えてあったのですが、幸いなことにほぼまったく顧みられず、物語じみた部分のない素晴らしい演奏になりました。
8月から私は移転先の工事であわただしく、やっと直前に照明の佐藤さん、映像の白岩さんとなんとか段取りを整えました。
当日の音楽家や来客の右往左往ぶりを思いかえすと到底整えたとは言いづらい思いもありますが、なんら指示を受けず人々がただ気持ちに従って振る舞った、そういう場が増井ビルの最後に現れたことをなにより誇らしく思います。
階段にはStrange Dreamのお香を無造作に束で置いておきましたが、きっと何人かの人が火を絶やさずにいてくれ、ビル全体が終始リラックスした香りに包まれていました。
この場を借りてあの場に居合わせてくださった演奏者、出展者、来客の皆さんはもとより、ツバメスタジオを使ってくれた皆さん、シールやジャムを買いに来てくれた皆さん、お茶菓子を提げて訪問してくれた皆さん、気にかけてくださった皆さんにお礼を申します。ありがとうございました。
~~~
ツバメスタジオは日本橋小伝馬町の井川ビルという増井ビルよりも築年数が古いビルの4階に場所を移して営業を再開しています。
下の階も借りたので、そこはギャラリーや音楽を楽しめる場所にしていきます。(工事が終わってない)
増井ビルと同様、気軽に遊びに来てください。
(2022年11月27日)